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第17回
新・風姿花伝
― 人は何故植物を枯らし続けるのか −
― 鉢花・山野草を枯らさないための秘伝公開 ―
【このコーナーを見ずして水くれを語るなかれ】
「君こそに非ず 水こそ命 わが命」
 ここからは完全に遠慮というものをかなぐり捨て、江戸弁、埼玉弁、悪餓鬼言葉を織り交ぜて、ズバズバと発言させていただく。一人の男の六十一年間の経験談を聞くために、多少お聞き苦しい所があろうかとは思うが、どうか我慢して震える指先でマウスを操作していってもらいたい。

1.水切れのダメージによる枯死への過程の研究
 鉢に植えられた植物が、不適切な水切れによってダメージを受け、やがてそれが枯死へとつながる過程は、多分真面目に研究した人間などいないであろう。しかし私は二十七歳の夏にこれをやらかした。 私は当時通っていた大宮の盆栽園で、夏は私達弟子六〜七人と、私達の指導師である二人の「番頭さん」、それに園の息子さんも含めると最多時は総勢十人ほどで午前九時と午後三〜四時の二回、一斉にそれぞれ受け持ちの盆栽棚に「水くれ」を行うのであったが、その時私は、たまたま枯れて放りっぱなしになっている二鉢の「雑草」のみが残った鉢を見つけて、なんとその「雑草鉢」にも水をやり始めたのである。 そして一週間ほどその二鉢を、他の立派な盆栽と同列の扱いで水やりをしたあと、今度は一鉢には午前一回の時だけ水をやり、もう一鉢には全く水をやらずにいた。すると夏のことである。さすがの雑草も水をやらない鉢は二日目にはカヤツリグサ系の長い線形の葉が艶を失い、三日目には葉先が折れたように半分下を向いて、完全なるグロッキーのほぼ枯れ状態となった。 しかし四日目に水をたっぷりやると、そのカヤツリグサ系の雑草は、夕方には色あせたままであるがやや生気を取り戻したのである。これには感動した。植物とは何と生命力が強いものであろうか。そしてその後二日間、またしても水を切った。そして再び三日目にまたたっぷり水をやると、カヤツリグサ系は夕方までに…今度はもう完全に復活の兆しは見せなくなった。枯れたのである。

 一方毎日午前一回の水をやっていた方の雑草は、葉先がいくらか赤茶く枯れ込んだり、葉の周辺がなんとなくシワ入りウェーブ状況になったりしたが、水をやるたびにスリップダウンからぱっと立ち上がったボクサーが平気・平気とジェスチャーをするように、根性の生育を続けていた。 水切れの時間が二日間、三日間と連続すると、さすがの雑草も耐え切ることはできなくなるが、毎日一回の水を補給しさえすれば、種子を結び子孫を周囲に撒き散らすことを命がけの使命と覚悟している雑草は、たとえ一日二十四時間の内の半分以上の時間帯にわたって水切れが続いても、次の水くれによってボロボロになりながら生き続けるのである。

Dr.グリーンが挿し木実験をした時の散水風景。
鉢ものへの水やりは時間をかけて丁寧にが理想。

(写真提供:近代出版)

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