Dr.グリーンの特別講義 親子で楽しむ花と緑の工作講座

〜はじめに〜
Dr.グリーンの思い出話

 私が初めて植物に強い関心を示したのは、忘れもしない小学校5年生の時でした。今からはや50年近くも前となるあの運命の日、私は当時一流の少年雑誌の中に、「椿の若葉と酒粕とでスズメを生け捕りにする方法」というものすごい記事を発見してしまったのです。そしてその記事を一気に読み下すやいなや、試してみたくて試してみたくて、どうにも気持ちをおさえられませんでした。ちょうど買い物に行こうとする母親に「おかーちゃん、頼むからお願い!酒粕ってやつを買ってきて!おねがい!」としきりに頼みこんで、無理やり酒屋さんに行ってもらいました。

 翌日は記事の中で絶対条件とされていた「すこぶる付きの晴天」でした。私は心臓をドキドキさせながら、コンクリートの上に椿の若葉を5〜6枚、ちゃんと裏返しに置き、それぞれ葉っぱの中心に酒粕を少々多目にセットしました。これでこの酒粕を食べに食いしん坊だか呑ん兵衛だかのスズメがやって来るにちがいありません。1枚目では酔っぱらわなくても、2枚目、3枚目の酒粕を食べ終わる頃には、スズメは完全にグロッキーになって、椿の葉をふとんにしてそのまま寝込んでしまうはずなのです。しかもその後は太陽にギラギラ照らされた椿の葉が、だんだんくるくると巻きはじめ、ついにはスズメをムシロならぬ椿の葉っぱで簀巻きにしてしまうのです。何と画期的なスズメの生け捕り法でしょう!

 でもこの記事を書いた大人は、大変な嘘つきでした。何時間待ってもスズメは酒粕を食べにやって来ないし(私は息をひそめて隠れていたので、私のためにスズメが来なかったのでは絶対ありません)、もっと許せなかったのは、半日太陽に照りつけられても、椿の葉は絶対にクルクルと巻きはしなかったのです。
 いくら当時は昭和30年代で戦後のどさくさ感の熱い延長線上にあったとはいえ、小学5年生を平然と騙すとは、悪〜い大人もいたものです。今だったらその記者も雑誌社も、日本中の良い子のお父さん、お母さんに徹底的に叩かれたことでしょう。私のように冷たく「騙されたお前が馬鹿だったのよ…」なんて言う母親は、決していないはずです(?)。
 きっとそのせいでしょう。今でも私は粕汁系料理が口に合いません…。

 ということで、このシリーズの最初は、私の人生で初めて苦汁を味わうこととなった椿から、あえてスタートしてみます。椿と酒粕のダメージから立ち直るのに長年月を要した私と異なり、皆様はただ無心に椿の花・葉・実とを使って、素朴で楽しい花あそび・木の葉あそびをなさってみて下さい。

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