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ドイツの冬は色に例えるとグレーである。薄く仕上がったモノクロームの風景写真を眺めているようである。特に私が住んでいたオランダ国境に近いノルトラインヴェストファーレン州は湿度が高く、湿った寒さの暗く辛い日々が続く。ひと月に五日間もない天気のよい日でも朝十時頃にやっと太陽が顔を出し、午後四時には沈んでしまう。 ドイツで二回目の冬を迎え、日本の太平洋側の日ざしで育った私は精神的に落込んでしまい、思うように香りが創りだせなくなってしまった。 そんなある日、南フランスの昔の同僚がミモザの花を送ってくれた。ライン川を往き来する船が見渡せる研究室の窓辺に飾った。北国の冬の低い日ざしに照らされたミモザは黄金色に輝き、その芳香を部屋中にまき散らし私の心を癒してくれた。薄暗い日々が続くドイツで明るく南国の太陽を想わせるミモザの花は何よりのプレゼントであった。 ミモザ(Acaia decurrens)は和名がフサアカシアで、高さ四〜五メートルの小高い木の枝に毬のような黄色い小さな花が房状に無数に咲く。 南仏カンヌ近郊のタヌロンの山に群生しておりカーニバル(謝肉祭)の頃に全山が見渡す限り山吹色に染まり見事な眺めである。 花の香りもすばらしく溶剤抽出法でミモザアブソリュートと呼ばれる精油となる。日だまりの埃のような粉っぽい香りと、緑の葉を感じさせるグリーンノートが絡み合い奥のほうにオレンジの花の香りがする独特な暖かみを持った香料である。 二月に誕生日を迎える私は研究所の皆にシャンペンをオレンジジュースで割ったカクテルを振る舞うのが習慣であった。そのカクテルはフランスで色と香りからか「ミモザ」と呼ばれている。 |
| 島崎直樹 プロフィール |
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