香りのコラム:香りのある風景

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第十四回 紅葉の香り
文・写真 島崎直樹
記事協力:(株)ワコール「WACOAL NEWS」2000年9/10月号
 仕事で米国のボストンへ来た。
 十月の第二月曜日が、米大陸発見のコロンブス記念日で、週末を含め、三連休になるので、車を借り郊外へ出かける。
 晩秋の、暖かく穏やかな日が続くことを、「インデアン・サマー」と言い、日本語の小春日和で、空は抜けるように澄んでいる。
 市内を抜け、マサチューセッツ州を横断するように西へ走る。
 紅葉が日本の楚々とした雰囲気とは違い、圧倒的なスケールで迫ってくる。カエデの葉が深紅に、アスペン(ポプラ)は黄金色に、カラマツやレッド・オークは赤く劇的に変化している。
 これでもかと、紅や黄色そして黄金色の波が続き、白いニューイングランド風の住宅や教会が点在し、まるで絵はがきを見ているようである。

 車を降りて散歩をする。
 森へ行くと落ち葉が一面に広がり、どこが歩道かわからない。
 がさがさと葉を踏みしめると干し草の様な匂いと、甘い香りが混ざりあった懐かしい自然の薫りがする。
 子供のころ遊び疲れての帰り道、夕日の匂いが、暖かく埃っぽく感じたのに似ている。
 森は夕暮れが近づくと、いっそう激しく燃え立つ色合いとなる。
 まるで夕焼けの空が地上に落ちたかのように赤味を増し、今にも燃え上がり、匂いがしそうである。

 夕食に立ち寄ったレストランの暖炉では、カエデの木を燃やしているらしく、ほのかにメープル・シロップの香りが漂う。
 揃いのツイードの上着を着た年老いたカップルが、人生の「インデアン・サマー」を楽しんでいるように食事をしている。
 彼らから紅葉を思わせる、甘く懐かしい匂いが立ち上っている。

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