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森と湖の国フィンランド

第5回 国立公園 森と湖
北緯60度から70度にわたるフィンランドの国土をここでは便宜上北緯65度を境に、そこから北半分を北部、そこから南半分を中南部と分けてみましょう。 フィンランド国内にある35ヵ所の国立公園のうち、8ヵ所が北部に、残りの27ヵ所が中南部にあります。


南部、ヌークシオ国立公園の朝靄に包まれた
針広混交林の紅葉

氷河がもたらした大きな迷子石が見られる中部、
ラウハンヴオリ国立公園
 気候的に恵まれている中南部の森林ではアカマツ、トウヒなどの針葉樹のほかに、ナラ、カエデ、シナノキ、トネリコ、ハシバミ、ハンノキといった多くの広葉樹を見ることができます。また、中南部の地形の特徴は標高が高い所でも400m未満、大部分が標高200m以下の起伏に富んだ低地が続いていることです。

 特に南東部には国内最大のサイマー湖(4,377km²)を始め、国内有数の湖沼地帯が広がっています。これらの細長くのびる湖沼は氷河時代に形成された氷食湖で、北西方向から南東方向に向かって並んでいて、過去の氷床の流動方向を的確に示しています。


中部、湿原と湖沼が複雑に入り組む
カウハネヴァ・ポホヤカンガス国立公園

中部、カウハネヴァ・ポホヤカンガス国立公園で
見られたアカヤマアリの蟻塚
 中南部に生息している珍しい動物としては、EU加盟国中現在フィンランドだけにいるリス科のタイリクモモンガと南東部のサイマー湖の周辺を住処としている淡水性のアザラシを挙げることができます。鳥類ではアビ、キツツキの仲間ではオオアカゲラとコアカゲラなどが稀少種とされています。

 植物ではエスカー(融氷河堆積物)の丘斜面や石灰質土壌など特殊な生育環境下に隔離分布しているオキナグサ属のプルサティラ・ベルナリスとプルサティラ・パテンス、クレマチス・アルピナ・シビリカ、ラン科のシプリペディウム・カルケオルスが稀少種の代表的な例です。


中部、セイツェミネン国立公園で保存されている
百年以上前の農家

中部、ピュハ・ハッキ国立公園における
自然探索路の解説板
 中南部の国立公園はフィンランド国内でも比較的人口が集中している地域にあります。昔から森林や湿原が次々と農牧地として開墾され、もともとの自然が残っている場所は面積が限られています。また、木材生産のための経済林が主体のこの地域では老齢樹や枯木の割合が極端に低くなっています。

 海域の国立公園を除くと、北部の国立公園とは対照的に面積が6〜105km²と中小規模の国立公園がほとんどです。これらの国立公園へは道路網等交通のアクセスが良く整備され、近隣の都市や町から日帰りでも割合手軽に公園の核心部の自然に触れることができます。


中部、ピュハ・ハッキ国立公園にて
自然発火による森林火災の傷跡が
生々しく残るアカマツの樹幹
 その昔フィンランドの原生林では落雷等自然発火によって森林火災が発生し、周期的に天然更新が行われていました。ところが人々が次第に周辺地域からフィンランドに移住してくるにつれて、こうした森林火災が初期に消火されるようになってしまいました。

 20世紀になって林産工業用の木材増産政策にそって林業が集約的に行われた結果、大面積皆伐、そしてアカマツやトウヒといった針葉樹が大面積に人工植栽され、森林の構造が単純化していきました。一方、湿原は農牧畜用に開墾されたり、大規模に排水工事をして森林に転換されたりして、戦後急速にその面積を縮小させていきました。


中部、ピュハ・ハッキ国立公園にて、
天寿を全うして横たわるアカマツの巨木


 最近多くの国立公園では残された自然の保護とともに、このように一度人工的に改変された自然を復原・復旧する努力も試みられています。

森と湖で代表される中部
ぺトゥケルヤルヴィ国立公園の夕暮れ

中部、コリ国立公園にて
ピエリネン湖を望む雄大な眺め

国立公園マップ

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