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中南米植物紀行

第1回 マゲイ(竜舌蘭)物語
その昔、プラントハンターと呼ばれる人たちが、植物の新種を探して世界中を旅して回りました。そんなプラントハンターたちの憧れの地だった新大陸アメリカ。花ではヒマワリ、ダリア、ペチュニア、マリーゴールド、サルビア、ベゴニア、バーベナ、コスモス、ナスタチウム、アマリリス、ブーゲンビリア、ポインセチア、一部の蘭類、エアプランツ類・・・野菜ではトマト、ジャガイモ、トウモロコシ、カボチャ、ピーマン(トウガラシの一種)、一部の豆類、アボガド・・・その他の植物ではピーナッツ、パイナップル、カカオ、チクレ(ガムの原料)、藍(染料)、主な綿、一部の麻類・・・。
コロンブスの新大陸発見以降様々なルートを通ってこれらの植物が世界中に広がり、私たちの生活を豊かにしてくれています。でも本当は、私たち日本人はこれら新大陸の植物についてのほんの一面を知っているに過ぎないのです。これからそんな植物の物語を始めましょう。

ご案内役は私、財団法人BIZEN中南米美術館理事長の森下矢須之です。私どもの美術館では中南米10カ国1600点の考古学美術品を収蔵・展示していますが、その他にも様々な中南米文化の情報発信をしています。この中南米植物紀行では、主に中南米原産の植物にまつわるお話を進めてまいります。

さあ、第一回は、あまり聞きなれない「マゲイ(竜舌蘭)」をご紹介しましょう。

マゲイってどんな植物?

マゲイ・アトロビレンス:プルケ酒の原料になるマゲイ。大きなものは3mにもなり、しばしば生垣としても使われる。撮影場所:メキシコ、イダルゴ州、サーグン。
マゲイはメキシコ高原に自生する竜舌蘭で、竜舌蘭科アガベ属に属します。
アロエを巨大にしたようなものと言えば外観的にはイメージしやすいかと思います。
サボテンと間違えられやすいのですが、サボテンの仲間ではありません。
メキシコを中心とした中南米地域に約300種の竜舌蘭が自生していますが、私たちに身近なものとしては日本でも観葉植物として人気の「ユッカ」が竜舌蘭科です。
最近は青の竜舌蘭なども観葉植物として出回っています。
なお、この植物の寿命は10年から100年で、命が尽きる直前に花を支える支柱のような茎キオーテの先にとても個性的な花が咲くため、別名Century Plantとも呼ばれています。

マゲイの歴史

マゲイ・アトロビレンス畑
古代メキシコではそのトゲを体内から血を取り出す儀式のための道具として用いたり、葉の繊維をロープや目の粗い布にしたりしました。しかし、その最も有名な加工品は蜜水を醸造した「プルケ」で、メキシコ中央高原古典期(紀元前10世紀〜紀元前後)の巨大遺跡テオティワカンでは既にその化身が描かれていますし、古代のメキシコ中央高原から中米にかけては神や王が美味しいプルケを飲みすぎて失敗したり恥をかいたりという物語もあります。また、アステカ時代にはマヤウェルという女神に例えられました。マヤウェルは多産と豊穣の神であり、マゲイの豊かな液状の樹液(蜜水)から「400の乳房を持つ女」とも称されていました。最近の発掘では中米エルサルバドルのセレン遺跡でもマゲイの栽培の痕跡が見つかっています。

テキーラだけではないマゲイの力〜注目の蜜水

街の風景:メキシコ、ハリスコ州、グアダラハラのソカロ(中央広場)とカテドラル(大聖堂)。グアダラハラはテキーラの原料であるアガベ・アスール・テキラーナの一大産地

マリアッチ:グアダラハラはまた、メキシコの伝統音楽マリアッチの本場でもあります
日本ではマゲイは主に観賞用ですが、現地、特にメキシコでは古来からそれを無駄なく生活のために使います。
まずはその葉っぱの表面の薄皮。この皮はミショーテと呼ばれ、その丈夫さと香ばしさを活かして地中で肉類を石蒸し焼きする料理のラップとして重用されます。また、前述の通り繊維は麻として織物やロープになります。サイザル麻と呼ばれるものもマゲイの一種から取れる麻です。葉っぱの先には鋭い針のようなトゲがついていてそれが葉っぱの繊維につながり、昔はそのまま縫い針と縫い糸のようにも使われていました。その他肉厚で丈夫な葉は今でもそのまま何枚も繋ぎ合わせて灌漑用の水路として使われたり、燃料、屋根材として利用されたりしています。勿論生垣として家の周囲でも栽培されています。

しかしなんと言っても有名な活用方法は、冒頭でも触れたお酒造りです。マゲイの芯からは蜜水と呼ばれるとてもさわやかで美味しい蜜が取れるのですが、古来先住民はある種のマゲイの蜜水を醸造してプルケというお酒を造りました。その後スペイン人が蒸留技術を持ち込み、マゲイを使って「メスカル」というお酒を造りました。実は有名なメスカルである「テキーラ」とは、その中でも最高級の「ブルーアガベ」というマゲイの原料を51%以上使った指定地域の蒸留酒のことをいいます。ちなみにテキーラとはメキシコ、ハリスコ州のテキーラ村という一大産地の村の名前です。テキーラは世界ブランドのテキーラサンライズ、マリガリータをはじめとする数多くのカクテルの人気で今では慢性的な品不足となっているとのことです。
「メキシコ国内の遺跡発掘でくたくたに疲れていても、現場近くでマゲイの蜜水を飲むと翌日には見事に楽になるんです」これはある有名な日本人考古学者から直接伺った話です。お酒の原料であるマゲイの蜜水は、近年グリセミック・インデックス(GI値/食後血糖上昇指数:その数値が低いほど血糖値の上昇がおだやかとなり、重要な代謝を担うインシュリンの分泌が緩やかにすすむということで世界的に注目されている指数)が極めて低い上に、イヌリンや各種アミノ酸、ミネラル、ビタミンがバランスよく含まれている健康甘味料として注目を集めています。

マゲイに出会うには? 手軽に入手可能となったマゲイシロップ

GI値27のマゲイシロップ
日本でもマゲイは育ちます。苗に関してもいくつかの種類がインターネットで購入可能です。元々痩せて乾いた土地で育つ植物のため比較的育てやすいのですが、その寿命はとても長い上に開花はその寿命が尽きる直前のみ、つまり一生に一度しか花をつけないため国内で花を見るのはほぼ不可能かも知れません。但し、メキシコ国内の特にメキシコ中央高原(メキシコ州、イダルゴ州、ハリスコ州など)ではタイミングが良ければそれを見ることが出来るはずです。勿論花をつけていないマゲイのりっぱな姿も一見の価値があります。
マゲイの葉を使ったお料理ミショーテを味わうにはやはりメキシコに行くしかないかも知れません。お酒に関しては、テキーラは日本にも美味しいブランドがたくさん入っていますので手軽に楽しめます。ただしプルケは短期間で発酵が進んでしまうため、これも現地で飲むべきでしょうか。

そして注目は、マゲイの蜜水を濃縮した「マゲイシロップ」。これはこれまで全く日本では入手できなかったのですが、昨秋より私ども美術館が本格的なシロップを日本で紹介しはじめました。
また「花いっぱいセレクトショップ」でもこのシロップの頒布を始めましたのでどうぞご利用下さい。

※GI値が低く注目のマゲイシロップはこちら→花いっぱいセレクトショップ
※関連リンク:BIZEN中南米美術館「マゲイシロップ物語」

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