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中南米植物紀行

第2回 トウガラシ物語

トウガラシの歴史

トウガラシは色も形もさまざま、これらが世界に広がり私たちの食卓を豊かに彩ってくれている。
世界中で主役(主食)を引き立てる名脇役「トウガラシ」の種類はなんと2000種以上もあるとも言われています。
私たち日本人が江戸時代以降、長らく慣れ親しんできたのは、一味唐辛子や七味唐辛子の原料として知られる「鷹の爪」。また、ここ数年「ハバネロ」が急速に知名度を上げて来ましたし、園芸店やレストランでも新しい種類のトウガラシを目にする機会は増えました。
とはいえ、まだまだトウガラシは私たちにとって、言わば「未知なる植物」です。トウガラシを見た目の違いで区別するのは良いとして、辛さの度合いだけで区別している日本人は、その豊富なバリエーションとすばらしい風味の違いで区別するトウガラシ文化圏の人から見ると、まだまだよちよち歩きだそうです。なお、ご存知の通り獅子唐、ピーマン、パプリカなども同じトウガラシの仲間です。
トウガラシはカレー、キムチ、麻婆豆腐、タイ料理、ベトナム料理、インドネシア料理などでも日常的に食されています。また、漢字で「唐辛子」と書くこともあり、アジアが起源だと思っている人もたくさんいますが、実はアメリカ大陸生まれです。しかも紀元前より広範囲に栽培されていました。


トウガラシのふるさとボリビアでは、今も多くの純粋な先住民が暮らす。(チチカカ湖近くの村で)

トウガラシ男:人物象形双胴壷(ペルー)
紀元前後〜600年のナスカ文化時代の土器

トウガラシ伝播図(クリックで拡大)
現在のトウガラシの原産地に関する研究では、その起源をボリビア中部地方という説が最も有力なものとなっています。また、アンデス地方のみならずメソアメリカ(一般に中米からメキシコ中央高原に掛けての地域を指す文化的地理領域を指します)においても、かなり早い時期からそれを食していたことが、考古学調査等を通して分かっています。
地上絵で有名な古代ナスカ文化の土器などにも、多くのトウガラシモチーフが残っています。私ども美術館で現在開催中の企画展「新大陸の仲間たち(古代中南米動物園)」の人間のコーナーでも、トウガラシの紹介と共にナスカ文化のトウガラシ模様の土器を展示しています。

トウガラシは、上記のように、その生まれた土地アメリカ大陸各地で、最初の市民権を得ました。特にヨーロッパ人がやって来た時、アステカ帝国が栄えていたメキシコ中央高原や、メキシコ南部から中米にかけてのマヤ地域、カリブ海島嶼部、さらにメキシコ同様にスペイン人侵入時には強大なインカ帝国が支配していたアンデス地域やアマゾンにまで至る地域がその舞台です。15世紀末ヨーロッパ人と出合ったトウガラシは、ポルトガルの商人によりアフリカに伝えられ、その後、インドやマレー半島、マカオを通って中国、朝鮮、日本にまでもたらされたのです。

なお、肝心のヨーロッパではその辛味が敬遠されて長らく市民権を得られませんでしたが、オスマントルコが遠征の際にトウガラシを持ち込んだハンガリーで、品種改良を繰り返した結果パプリカが生まれ、その後マイルドなトウガラシの仲間は多くのヨーロッパ諸国でも愛されるようになりました。

トウガラシってこんなに素敵
ちなみに、トウガラシの食品としての効用について簡単にお話しますと、トウガラシの辛味成分カプサイシンには減塩効果、抗酸化、体力維持、腫瘍細胞増殖抑制、鎮痛、抗ストレス、脂肪代謝促進などの優れた作用があることが知られています。ただし、食欲増進も促すため過食に陥るとか、強い刺激作用を有するために胃や腸の粘膜に負担がかかるといった、デメリットにも十分考慮した上で、適度な摂取が望まれます。

そんなトウガラシたちに出会うには
今は書籍やインターネットでも、トウガラシに関する情報はある程度入手することが出来ます。また種苗メーカーも、まだ極めて限定的ですが、徐々に取り扱い品種を増やしていますので、ネットショップなどで種子を買い求め、栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


サルサ・メヒカーナ:メキシコでは毎日の食卓に欠かせないサルサ・メヒカーナ(メキシカン・ソース)。日本で言えば醤油のような存在で、もちろんトウガラシがほどよく効いている。
育てる楽しみを増やすためにも、色々なトウガラシの味を直接体感するには・・・となると、日本ではほとんど手に入らないため、本場に出向く事ができれば手っ取り早いのですが、これは時間とお金があればという前提。
それ以外の手段としては、専門店で本場アメリカ大陸の料理を味わうことをお勧めします。例えば、東京都渋谷区代官山のメキシコ料理店「ラ・カシータ」。ここでは季節に応じて12〜15種類のトウガラシ(現在メキシコや中米で主に食されているほとんどの種類)を使い分けて素晴らしい味を提供しています。またテレビ番組「料理の鉄人」にも出演された渡辺オーナーシェフがお手すきのようなら、それぞれのお料理に使われているトウガラシにまつわる楽しいお話が伺えるはずです。

※関連リンク1:メキシコ料理:ラ・カシータ
※関連リンク2:BIZEN中南米美術館

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