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中南米植物紀行

第4回 カカオ物語

カカオの歴史

カカオの実であるカカオボッド、この中に種子であるカカオ豆が入っている
 カカオに関する人の歴史での最初の痕跡としては、紀元前1100年頃の初期マヤ遺跡クエリョ(ベリーズ)で発掘されたカカオの外皮だそうです。また、同時期から起源前400年頃まで栄えたメキシコのオルメカ文明地域のことばにカカオの語源があるとも言われています。カカオは木や花よりもその実の中にある豆(種子)が人々に珍重されてきました。

マヤ文明のカップ、形状や内側底部にある混ぜ傷からチョコレート飲用土器の可能性がある
 マヤ文明が花開いたメソアメリカでは各地に栽培場所が広がり、その豆は主に貨幣や精力剤、薬として使われました。さらに時代が下ったアステカの時代には、蜂蜜やバニラ、唐辛子といった様々な混ぜ物を入れたまさにチョコレートの原型としてのカカオ飲料が現われますが、それは王や貴族など一部の人たちだけが飲むことを許された貴重な飲み物でした。
 15世紀末に始まるスペイン人による新大陸の征服の過程でヨーロッパ人はカカオの存在を知りましたが、しばらくそれは先住民の飲み物でしかありませんでした。そしてカカオがヨーロッパに渡るにはそれから100年弱の年月がかかったのです。その間、新大陸では砂糖を入れたりシナモンを加えるなど味の工夫がされました。さらにヨーロッパに渡った飲むチョコレートもしばらくはスペインがその美味しさを密かに独占していたのです。新大陸からスペインに向かう船をイギリス艦船が襲い、金貨が満載されていると思ったらただの苦い豆だったのでがっかりして全て海にぶちまけたといった逸話もあるそうです。
 そして17世紀の初頭と半ばにスペイン王室からフランスに興し入れした王女様達がついに素敵な味をフランスに伝え、それを皮切りにヨーロッパ各地にチョコレートが広がりました。19世紀になるとココア、続いて固形チョコ、ミルクチョコが次々と開発され、今ではチョコレートは固形のものが主流を占めるようになりました

カカオってこんなに素敵

カカオの木、周りの木で日陰を作っている
 カカオの木はアオギリ(梧桐)科に属します。畑に行くと5、6mの高さのものが多いのですが、野生のそれは15mにも達するのだそうです。熱帯で生まれ育つカカオの木ですが、案外直射日光に弱いなどデリケートで、カカオ畑ではカカオの木の周りに日除けのためにバナナ、パパイヤ、ゴムの木などを植えます。
 写真の農園はメキシコ南部タバスコ州にあるカカオ農園です。この州には上でご紹介したオルメカ文明の巨石人頭が数多く残っていて、昔も今もカカオの一大産地です。

カカオの花、太い幹から唐突に可憐な花が
 さて、カカオの豆はとても有名なのに、花のことを知っている人はほとんどいません。カカオの花は実に不思議な咲き方をします。カカオの木の幹からニョキニョキ生えてくるといった表現がよいでしょうか。ただし、その花はとても可憐で3cmほどの白、ピンク、赤などの色で咲きます。一本のカカオの木には数千の花が咲きますが、その中で結実するのは数十個のみです。そのカカオポッドの実の中に、みなさんご存知のカカオ豆が30〜40個ずつ入っているのです。
 カカオについては、かつての口・喉の炎症、歯痛、下痢、血便、肝臓や肺の炎症、悪寒、虫刺され、強壮、難産、催乳への効果といった昔からの経験的な薬効だけでなく、今話題のポリフェノールの含有に関して各方面で研究が進んでいます。事実カカオ(カカオマスポリフェノール)には赤ワインの数倍のポリフェノールが含まれ、その薬理作用として抗酸化、免疫調整、胃潰瘍予防、抗動脈硬化、抗ストレス、静菌・殺菌といった優れた作用が確認されています。

そんなカカオたちに出会うには

BIZEN中南米美術館カカオ展示コーナー(部分)
 残念ながら日本には本格的なカカオ農園はありませんので、熱帯植物園などでカカオの木を見るほかありません。東京都の夢の島熱帯植物園をはじめとする植物園にはカカオの木を育てているところが多くありますので、予め開花予定などを確認して訪問されればいかがでしょうか。
 私どもBIZEN中南米美術館(http://www.latinamerica.jp/)では、現在新大陸の仲間たち(古代中南米動物園)という常設企画展を開催中ですが、動物の王者人間のコーナーで栽培植物としてのカカオの歴史を古代の遺物なども使いながら紹介しています。
 また、館内では取れたカカオ豆をそのままローストしたものを試食していただいたり、グループでのお客様にはご希望に応じて古代のカカオ豆の調理風景の再現をお見せしたりする他、古代のチョコレートの試飲サービスも致しております。お問い合わせはBIZEN中南米美術館(電話:0869-72-0222)まで。

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