調香師の香り紀行「マダガスカル」 home

文・写真 島崎直樹
フランス調香師協会の「香りの道」
マダガスカル旅行に参加して
「香料」第205号(2000.3)別冊

第四回  プランテーション見学


渡し船
 早朝6時にホテルを出発し150kmはなれたスイス人のエグリ(EGLI)氏の経営するプランテーション見学に出かける。途中サイクロン(インド洋に発生する熱帯性低気圧)で橋が流されてしまい、渡し船でトラックをはこんでいた。一台ずつ運ぶので時間がかかり、順番待ちで川辺で野宿をし2〜3日過ごす人もある。


クローブの蕾
 我々は歩いて修理中の橋を渡り、対岸に待たせておいた別の車に乗り換え先へ進んだ。それまで三台に分乗していたのが二台になってしまったのでギュウギュウ詰で3人分の座席に5人で座らなくてはならなくなった。現地まで5時間、殆どが舗装されていない道、その上湿度が高く気温も35度以上あったので、到着するまでにヘトヘトになった。  


胡椒の実
 クローブ(Clove)、ペパー(Pepper)、シトロネラ(Citronella)、ベチバー(Vetiver)今年からパチュリ(Patchouli)の栽培も始めたとのこと。広い農場を数時間汗みどろになりながら見学する。


コーヒーの花
 コーヒーの木が沢山あり、白い花が咲き乱れていた。その香りの良いこと、くちなしの花の匂いを軽くしたホワイトフローラル系で、まるでバランスの良い調合香料かと思うほどである。焙煎したコーヒー豆の香りは当然ながらしないが、花を口に含み噛むと美しく甘い花の香りとほのかなコーヒーの苦味がする気がした。昼食は海辺に近いレストランで海老三昧の食事をした。
 今回の旅行は首都のアンタナナリボをのぞき海辺に近いところばかりであったので海産物を堪能できた。生まれて此の方これほど魚や海老を食べたことがないと喜んでいる人がいたほどである。
 マダガスカル人に主食はと聞くと「米」と答える。なるほど旅行中にも至る所で水田を目にした。稲作に恵まれた気候で二毛作が一般的で三毛作も可能とのこと。マダガスカル人は小柄であるがその食欲には驚かされる。大きな皿に山盛り一杯の炊いたご飯の上に肉や魚と野菜のゴッタ煮のソースをかけ、しかもおかわりを何回もする。  


クローブの葉の蒸留所
 帰路、クローブの葉の蒸気蒸留所を見学した。小川から竹の樋(とい)で水を引きドラム缶を改造して作った冷却装置に入れていた。近くの木を伐採して薪にして燃料にしてエッセンシャルオイルを採っていた。非常に原始的な蒸留小屋で、電気も全くない所である。小屋のそばに水田がありニ家族ぐらいが生活していた。この様な昔からの蒸留小屋がいくつかあり、燃料として木を伐採するので森林が急速に減少しつつある。
 焼き畑も行われておりマダガスカルの自然破壊は想像を絶する速度で進行していると、森林学を学びSYPEAMの秘書で、今回の旅行中我々と同行してくれたアンドリー君が嘆いていた。ちなみに彼の名はRANDRIAMANANTENA Andrin Irantoと名刺に書いてあるが、本当はもっともっと長いそうである。マダガスカルでは父方と母方両方から名前を貰い省略すると失礼に当たるので長い長い名前になるそうである。もっとも日常ではそうもいかず皆彼のことをアンドリー(Andrin)と呼ぶそうである。

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