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| 第8回 フタバガキ | ||||||||||||
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「フタバガキ」という植物の名前を聞いたことがありますか? 日本にいるとあまり馴染みがない植物ですが、実はけっこう日本とかかわりがあったりします。「ラワン材」という言葉は聞いたことがあるでしょう?ラワン材はフタバガキ科の樹木の材木です。日本はたくさんのフタバガキ科樹木の材木を、合板などの材料として消費しています。 フタバガキ科樹木は、東南アジアの原生林にいっぱいあります(ここからは簡単にフタバガキと呼ばせてください ⇒ ページ下部 ※注 参照)。当然、シンガポールの自然保護区にも、シンガポール植物園にもいっぱいあります。 どうしてそんなにいっぱいある「フタバガキ」をわざわざ話題にしたかって? 「熱帯の木々はきまぐれで、何年かに1回しか花を咲かせないものも多い」ということを、「第3回 シンガポール植物園」の回で書きましたが、フタバガキはその代表格!なんと3年とか5年とか、ものによっては10年以上に1回しか花を咲かせない(…ということは実もならない)という気まぐれ者。ですから花や実に遭遇できたらものすごーくラッキーな木なのです。ひたすら自然保護区や植物園を散策している私たちでさえ、なかなかフタバガキの花や実に出会うことができません。 不思議なことにフタバガキ科の樹木は、同じ年の同じような時期に種類の違うものも一斉に花を咲かせます。この現象を「一斉開花」と呼びます(言い換えれば、一斉開花の年以外はなかなかフタバガキの花や実には出会えない…)。 そして! 今年2005年はシンガポールでは実に9年ぶりの「一斉開花」の年でした。それも専門家の先生が「特大」と評するスゴサ。2005年の3月から7月にかけて、狂喜乱舞したわが仲間達は「愛するフタバガキちゃんの花と実」を求めて、北へ南へ東へ西へ奔走していたのでした(5月にはマレーシアにまで出かけてしまいましたぁ)。 私がシンガポールに引っ越した2002年にも、もう少し小さい一斉開花があったのだそうですが、そのときの私は全く興味がなかったために、うっかりしているうちに花も実も終わってしまい、実質的に今回が私にとって初めての一斉開花の年となりました。待ち焦がれていた宝物に出会えて…もう、嬉しくって! わかってもらえるでしょうか?このドキドキワクワク! 今年はシンガポール国内の自然保護区で花や実をたくさん観察することができましたし、シンガポール植物園では両手いっぱいの実を拾うことができました。写真は戦果の一部、私の宝物です。
この実を空へ投げ上げると、くるくる回って地面に落ちてきてとても楽しいんですよ。 フタバガキという名前は「双羽柿」と書き、「2枚の羽(翼)を持った果実」という意味の科名「Dipterocarpaceae」から付けられました。2枚の羽の実が多いですが、3枚や5枚のものもあります。種類によって違います。
フタバガキの木は、普通は背が高くて、花が咲いていたとしても近くに寄って見ることなどできないのですが、この木はちょうど目の高さに枝があって、写真を撮ることができました。2cmくらいの花が連なって咲いていました。 5枚の花びらが、アサガオのようにちょっとねじれてついていて可愛らしいでしょう?この花びらが落ちるとガクの部分が残ってその何枚かが成長し、実の羽(翼)の部分になります。 Shorea属は3枚の羽が伸びるのが特徴です。でもよく観察すると残った2枚のガクも小さく残っているんです。これも可愛い。
東南アジアの低地の熱帯雨林は高さが大体30mくらいなのですが、そこから飛び出してすっくとそびえ立つ突出木(エマージェント)と呼ばれる木々があります。突出木の高さは50m、高いものでは70m(なんと20階建てのビルくらい)にもなるとか。大きいですねー。 その突出木の約8割をフタバガキ科の樹木が占めています。フタバガキがいかにこの辺りの森で重要な木か、わかるでしょう?
「Shorea curtisii」通称「セラヤ」。下から上まで太さの変わらない幹がまっすぐに伸び、先端にブロッコリーのように葉が茂る部分がのっかっているのが見て取れますね。こんな形のフタバガキが、緑の中からぴょーんと飛び出しているのが森の特徴です。 フタバガキの実があんなふうにくるくると回って落ちてくるのは、滞空時間を増やして少しでも遠くへ飛ぶためもありますが、高いところから落ちてくるので、地面に実が落ちた時の衝撃を和らげているのだと言われています。 「ラワン材」はフタバガキ科樹木の材木だということを最初に説明しましたね。フタバガキは太い幹が高くまっすぐ伸び、材に節がないのが大きな特徴です。特に材が柔らかい種はベニアの材料に最適で、おまけに人件費の安い国の原生林から、ただ伐採してくるものだから値段も安い。そのため日本が建設ラッシュの時代にコンクリートを流し込む型枠用のベニヤとして大量に輸入、消費されました。 材木を切り出す森というと、日本人の私たちはスギやヒノキの植林を思い浮かべますが、フタバガキが生えている森は人工林ではなく、ほとんどの場合、原生林です。伐採業者が求めるフタバガキの木は1haに数本しかないにも関わらず、その数本を切って運び出すために、次々と原生林(低地の熱帯雨林)は破壊されていきました。 最近の木材市場では「ラワン」という言葉は聞かれず、「メランティ」という言葉が一般的になりました。なぜでしょう? 「ラワン」はフィリピンでフタバガキ(の一部)を指す言葉。でも今はフィリピンの森のフタバガキは伐採し尽くされてなくなってしまい、日本に入ってこなくなりました。今、伐採が行われているのは、ボルネオ島。「メランティ」はボルネオでの呼び名です。 熱帯雨林の破壊による地球環境への影響が世界中で危惧されていますが、東南アジアの低地熱帯雨林の消滅には、フタバガキの伐採が大きく関わっているということを、この機会にぜひ知っておいてくださいね。 破壊されたフタバガキの森が元の森に戻るのはとても難しいです。熱帯雨林特有の事情もありますが、フタバガキ特有の事情もあります。フタバガキは先にも書いたように数年に1回しか実をつけません。その上、ほとんどの種子は昆虫や動物に食べられてしまい、残った種子も発芽能力のある期間がとても短くて、たくさん落ちた種子のうち、発芽できるものはごく一部なのです。おまけにせっかく発芽しても成長が遅くて、初めての花が咲くまで60年もかかる種もあるとか…。そんなわけで自然の更新も植林もなかなか進まず、どんどん森がなくなる一方…というわけです。 シンガポール植物園には約40種のフタバガキが植えられています。マクリッチ自然保護区やブキティマ自然保護区では自然のフタバガキを見ることができます。「板根」と呼ばれる、根が巨大で見事なものもしばしば。シンガポールへ来られたら、東南アジアの代表的な樹木「フタバガキ」をぜひその目でご覧になってくださいね。 ※注 朝日園芸百科「植物の世界」によれば、フタバガキ科は3つの亜科に分けられ、主にアジアに分布するフタバガキ亜科は13属約470種、分布の中心はマレー半島、スマトラ島、ボルネオ島、フィリピン群島で、全体の3分の2の種がこの地域に集まっているそうです。今回の文ではフタバガキ亜科をフタバガキと呼んでいます。 |
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